労働時間の自己申告は認められない? テレワーク下の労働時間管理方法を解説

テレワーク下では、企業による労働時間の管理が難しくなるため、従業員の自己申告で労働時間を把握している企業も多いようです。しかし、企業は従業員の労働時間を客観的に把握しなければなりません。2021年3月には厚生労働省が、テレワークでは労働時間の自己申告を認めるとガイドラインに明記しました。本稿では、企業の労働時間の管理義務やテレワーク下の時間管理、自己申告制にするメリット・デメリット、企業が行うべき対策を紹介します。

労働時間の管理について

労働時間把握は義務化されている

企業が従業員の労働時間を適正に把握・管理することは、従業員の心身の健康を確保するために欠かせません。このような、企業の勤怠把握の重要性を鑑みて、2019年4月より、改正労働安全衛生法において、労働時間を客観的に把握することが義務化されました。

労働時間の把握・管理は、従業員の健康のためだけに行うわけではありません。従業員が業務にどれくらい時間がかかっているか知ることは、適切な労働時間配分や人事評価の面でも重要です。また、過労死や過労自殺などの大きな労働災害を防ぎ、さまざまな労使トラブルから企業を守るためにも大切なことといえるでしょう。

労働時間管理の適用範囲

  • 対象事業場

労働時間の把握義務化が適用される事業所は、労働時間に関する法律(労働基準法)が適用されるすべての事業所です。中小企業も例外ではありません。

  • 対象労働者

労働時間把握義務化の対象となる労働者は、管理監督者や、みなし労働時間制の対象者を除く、すべての労働者が対象です。

労働時間管理の方法

企業の管理職が、従業員の労働時間を確認・記録するには以下のような方法があります。

  • 企業の管理職自身が現場で確認し記録すること
  • ICカードやタイムカードなどの客観的な記録を確認し、記録すること

テレワークでの時間管理方法

勤怠管理システム

勤怠管理システムは、勤怠情報の集計や、休暇・残業の申請・承認、シフト設定などを、Web上で行えるシステムです。大人数の従業員を管理しやすく、管理職の負担を軽減できるため、すでに導入している企業も多いでしょう。

勤怠管理システムはたくさんの種類がありますが、不正打刻を防いだり、端末からリアルタイムで勤怠状況が確認できたりするなど、便利な機能もあるため、自社に合ったものを選ぶと良いでしょう。

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メール

メールで、始業時刻や終業時刻を都度連絡する方法です。メールを使って勤怠管理をする方法は、テレワークを導入している企業で、よく利用されています。メールはビジネスの基本ツールなので、誰もが使い慣れており、業務の進捗状況などの報告も同時に行いやすいのが特徴です。

また、「CC」機能を使うことで、管理職以外の同僚にも記録や情報を共有できます。しかし、始業と終業のたびにメールを送らなければならないので、「面倒だ」という従業員からの声もあるようです。

電話

管理職などに電話をかけ、業務を開始すること、終了することを伝える勤怠管理方法です。電話は使用のハードルが低く、連絡にも時間がかかりません。また、相手の声を聞いてコミュニケーションを取れるので、従業員がちょっとした報告をすることもできますし、管理職は声の調子などから従業員の細かい変化にも気付けます。

しかし、電話は一度に一人ずつとしか話せないため、電話を使った勤怠管理は、少人数のチームを管理するときに適した方法といえるでしょう。

自己申告制

自己申告制は、従業員自身の申告によって労働時間を管理する方法です。厚生労働省はガイドラインの改定の中で、十分な説明の実施などを条件に、テレワークでの労働時間の自己申告を認めると明記しました。

ただし、自己申告による労働時間の把握については、企業の性質的にあいまいな労働時間管理となりがちである場合に、やむを得ず導入するものとされています。上記のような、より確実な勤怠管理の方法がある場合は、そちらを行う方が望ましいといえるでしょう。

自己申告の方法としては、エクセルや勤怠管理ソフトなどに従業員が始業時刻・就業時刻・休憩時間などを記入・入力する形式が考えられます。

自己申告制の特徴

メリット

自己申告制のメリットは、無駄な残業時間の削減に繋がることです。従業員が正しく時間を申告していることが前提ですが、自己申告制であれば、本当に働いた分だけを申告することができます。タイムカードなどほかの方法の場合、業後に一服した時間など、実働以外の時間も残業時間に含まれてしまう場合があります。

分子を増やすには、「労働投入量を増やす」「設備をグレードアップさせる」「より生産力のある生産方式に変える」といった施策を行う必要があります。しかし、こうした施策は確実に成果が見込める訳ではないため、容易に生産性を向上させられるとは限りません。

デメリット

自己申告制のデメリットは、労働時間の適正な把握をするには、しっかりとしたルール作りが必要なことです。自己申告制では、紙やエクセル、システムへの数値入力などで管理する必要があるため、ヒューマンエラーも発生します。また、周囲に遠慮して正しい残業時間を申告しない、虚偽申告をするといったケースも起こり得るため、正確な労働時間の管理には工夫が必要です。

自己申告制の導入と運用に向けた対策

自己申告制に関する説明の実施

従業員から申告された勤怠情報だけでなく、必要に応じて実態調査も実施しましょう。自己申告で把握した従業員の勤務時間が、実際の時間と合致しているかについて、定期的に管理職が確認することも大切です。申告時間と実際の労働時間に解離がある場合は、原因を究明し再発防止策を講じる必要があります。このような実態調査は、企業が自主的に行うほか、従業員や労働組合から求められた場合も実施する必要があります。

実態調査の実施

自己申告制のデメリットは、労働時間の適正な把握をするには、しっかりとしたルール作りが必要なことです。自己申告制では、紙やエクセル、システムへの数値入力などで管理する必要があるため、ヒューマンエラーも発生します。また、周囲に遠慮して正しい残業時間を申告しない、虚偽申告をするといったケースも起こり得るため、正確な労働時間の管理には工夫が必要です。

適正な労働時間申告の推進

従業員が適正な労働時間を申告できるように、労務環境を整備しましょう。時間外労働時間数の上限設定は、従業員の正確な申告を阻害する恐れがあるため控えるべきです。また、時間外労働時間削減を促す社内通達なども、場合によっては勤務時間の正しい申告の妨げとなる可能性があるので、影響を考慮して慎重に行いましょう。従業員が労働時間の自己申告を行いやすい体制を整えることが大切です。

まとめ

テレワーク下では、従業員の働く姿が見えないため、労働時間の把握は困難です。そのため、サボる従業員や働き過ぎてしまう従業員が出てくることが考えられます。業務をサボるのは問題ですが、管理職が気を付けなければならないのは、働き過ぎてしまう従業員です。従業員の自己申告によって労働時間の把握をしている企業は、勤怠ルールの徹底や、定期的な実態調査を欠かさずに行い、勤怠把握について常に気を配りましょう。

※この記事は、「労働時間の自己申告制はできない?テレワーク下での労働時間管理の方法を解説」の転載です。

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