先行きが不透明な時代、さらには労働人口が著しく減少していく日本では、今後ますます変化に即応し、創造性の高い「組織づくり」が必要とされています。本来、バックオフィス部門は、組織づくりにおいて重要な役割を担うポジションであり、最大限コミットしていく存在です。強い組織を目標にするのであれば、まずはバックオフィス部門の業務改革を念頭に置く必要があります。
目指すのは効率化の先にある「創造的な業務」
働き方が大きく変わっている現在、バックオフィス部門はその変化の中心に立たされています。人事・労務にまつわる業務では、入社手続きや給与明細の配布に年末調整など、まだまだ紙ベースの業務が多く残っており、かねてからペーパーレス化が叫ばれていました。
そこにきてコロナ禍となると、そもそも出社自体が感染拡大のリスクとなる状況です。バックオフィス部門が、「紙に押印するために出社する」といった業務実態そのものを改善したいというニーズは、多くの企業で格段に高まっています。
人事・労務向けクラウドシステムを展開し、バックオフィス部門をサポートするSmartHRの桑野絵維子さんは、「ペーパーレスは単に効率化だけの話ではなく、紙に関わる業務を圧縮することで、より価値ある仕事に注力してほしいですね」と語ります。バックオフィス部門は、企業文化の醸成や従業員の働きやすい環境づくりなど、組織づくりに邁進し、創造的な業務に力を発揮することが理想だと言い切ります。
同社では、働き方改革を進める企業に対して、3つのポイントを説明しているそうです。1つは「労働人口減少への対応」、2つ目は「労働時間の削減」、さらに3つ目が「AIやRPAといった台頭するテクノロジーに負けない社員のキャリアづくり」。単なる業務効率化ではなく、強い組織をつくる際の目標まで見据える必要があると強調します。
「バックオフィス部門の創造的な業務として、採用から社員教育を実施して、社員のキャリアづくりのサポートなども入ってくるでしょう。ですが、新入社員の入社手続きに追われてしまったり、契約社員の更新業務が煩雑になって、創造的な業務がおろそかになれば、意味のある働き方改革にはならないはずです」と桑野さんは説明します。それだけ、バックオフィス部門に求められる役割は大きいといえるでしょう。
組織づくりに関わる取り組みを成功させるには?
実際にバックオフィス部門が、企業の戦略的な改革の鍵を握るとされたレポートも発表されています。2021年2月に、マクロミルが実施した従業員31名以上の企業を対象に人事・労務にまつわる悩みを聞いた調査では、経営戦略に紐づく人材教育や採用、組織づくりといった人事施策を行っているものの、成果に満足したという回答は4割程度しかありませんでした。実に半数以上が、失敗したと感じているという結果です。
なぜ、多くの企業が失敗したのでしょうか? アンケートでは、その要因についても調査していますが、最も多かった回答は「人手が足りず、追加の人員が得られなかった」というものです。「ただでさえ、バックオフィス部門の通常業務は煩雑です。単純に戦略的な改革業務を上乗せするだけでは、成果につながらないという実態が、このアンケートから読み取れるでしょう」(桑野さん)。
ITツールを導入しただけで、DXは起こらない
こうしたバックオフィス部門、特に人事・労務の業務負荷は、SmartHRのサービスを利用することで圧倒的に軽減されるはずです。しかし、「ITツールを導入すれば、DX(デジタルトランスフォーメーション)が実現し、自然と組織改革が起きるわけではありません」と桑野さんは指摘します。
「DXはITを使った業務効率化と考える方もいますが、最終的には企業やビジネスにおいて、変革(トランスフォーメーション)が起きる必要があります。その意味で一番重要となってくるのは、『自社の現状整理』です」と桑野さんは明かしました。
ITツールはあくまでも手段の1つであり、組織をどのように変えたいのか、そのためには何がボトルネックになっていて、その対応策はITなのか別の方法で行うべきなのかを見極めることが大切だといいます。自社の現状整理を行わず、ITツール導入ありきで改革を進めることは、失敗の大きな原因になるのです。
だからこそ同社では、導入前の段階からお客様の課題に寄り添い、本当に自社ツールを導入することで課題解決になるのか、導入ありきではない課題の棚卸をお客様と一緒に行います。
適切なデジタル化により“データが価値を生む”
現在直面する課題や情報把握をきちんとした上で、ITツールの導入によるデジタライゼーションを実現できれば、人事・労務のデータは非常に高い価値を提供してくれるようになるはずです。
例えば、縦割り業務のために、元は同じExcelデータが部門間でそれぞれ更新されてしまった別物のファイルになっていたり、人によってフリガナなどの記載方法が異なり、標準化ができないといった課題があったかもしれません。これらをツール導入によって解消できれば、データは“宝の山”になってきます。
働き方改革を進めるのであれば、社員の平均残業時間や年間有給取得率、それに離職率の推移や平均給与推移などの分析も、簡単に行えるようになるため、KPI(重要業績評価指標)設定やモニタリングも実現します。
人員計画に際しても、人員数推移や構成割合、入退社数、部署ごとの退職者数など、簡単に割り出せるので、適切な採用と人員配置ができるようになるでしょう。こうしたデータを活用した可視化によって、バックオフィス部門から始まる業務改革は、企業の戦略的な改革を成功させる鍵を握っているのではないでしょうか。
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