コロナ禍で企業の健康管理はどう変わる? オンラインでの健康管理とは

コロナ禍において、企業による従業員の健康管理は重要性を増しています。在宅勤務が増えた現在、健康状態を把握することが難しいため、オンライン産業医面談や定期的なストレスチェックなどの健康管理を怠らないようにしましょう。今回は、企業が義務付けられている健康管理業務やコロナ禍における健康管理の課題、オンラインで実施できる健康管理の方法について解説します。

企業が義務付けられている健康管理業務

健康管理業務とは

企業には、職場における労働者の安全と健康を確保しなければならないという「安全配慮義務」があります。本来、安全配慮義務は、労働災害などの事故や災害の防止、職業病等の防止などが目的に定められましたが、その後過重労働によって心身の健康を損ねる労働者の問題が深刻化したことにより、健康診断や労働時間管理をしっかり行い労働者の健康に配慮する、という義務も含まれるようになります。

社員が心身ともに健康な状態で働ける環境を整えることは、結果的に企業の利益にも繋がります。そのため、社員の健康管理は会社にとって重要な責務なのです。

健康診断の実施

企業が行うべき健康管理のための施策の一つに、健康診断の実施があります。労働安全衛生法第六十六条では、従業員を新たに雇用した時と、その後1年に1回の定期診断、および政令で定める特定業務従事者に対する健康診断を実施する必要があります。このような健康診断の実施義務に違反した企業には50万円以下の罰金が科せられるという罰則があるため、企業は従業員には忘れずに健康診断を受けさせるようにしなければなりません。

また、健康診断の結果、さらに詳しい検査が必要な場合は、二次健康診断の受診推奨や、異常の所見について産業医の意見を聴取するなど、労働者の健康状態を把握する必要があります。

ストレスチェックの実施

労働者がメンタル面での不調を抱えるリスクを防止し、精神的な健康を保持増進するために、労働安全衛生法によりストレスチェックの実施が義務付けられています。ストレスチェックは、「常時労働者が50人以上いる事業場」では義務、それ以外の事業場では努力義務とされています。

このようなストレスチェックの結果、高ストレスと判断された人の中で必要とされる人や希望する人には医師の面接指導を実施し、その内容について医師から意見を聴取し、必要があれば労働環境の改善などを行わなければなりません。ストレスチェックについても、未実施の企業には50万円以下の罰金が科せられます。

コロナ禍における健康管理の課題

従業員の健康状態の把握が難しい

新型コロナウィルス感染症の流行により、在宅勤務を取り入れる企業が増えています。在宅勤務は、感染防止やワークライフバランスの改善に一定の効果があるものの、会社にとっては従業員の労働環境を把握できないというデメリットがあるでしょう。

単に労働時間や業務内容の把握だけではなく、コミュニケーションの機会が減り、従業員の顔を直接見る機会も無くなるため、会話や見た目から体調不良を推察することが難しくなります。

生活習慣の乱れや運動不足が懸念される

コロナ禍による自粛生活が長引いていることにより、外出頻度の低下などから、運動不足や体重増加、生活習慣病の悪化が懸念されています。また、自宅と職場の区別が付きづらくなるため、かえって気持ちが休まらないための精神的疲労や、コミュニケーション不足による孤立感、不安感の増大など、精神的な面での問題も危惧されています。

オンラインで実施できる健康管理の方法

従業員が個別に相談できる環境を整える

上記のような問題を従業員が抱える前に、企業側は対策を講じる必要があります。従業員の状況を把握する方法としては、定期的にWeb会議ツールなどを使って、従業員と上司がコミュニケーションを行う場を設けることが有効でしょう。業務報告や個別の相談などをオンライン上で実施し、在宅勤務中であっても些細な質問や悩みを話せる環境を構築することが大切です。また上司は、部下に仕事の負荷がかかりすぎていないか常に確認し、部下の心身の健康にも気を配る意識を持つ必要があるでしょう。

従業員から健康情報の提供をしてもらう

在宅勤務における健康管理の問題を解決するため、さまざまな健康管理アプリが開発されています。過重労働を防止し、メンタルの不調や健康リスクを予測できる機能があるため、企業による従業員の健康管理に対する方針によって、適したアプリを導入するのも良い方法です。

また、上司とのやり取りのほかにも、健康管理を専門に相談できる窓口を設置し、従業員の健康情報を得られる仕組みづくりが必要です。

産業医との面談をオンラインで実施する

新型コロナウィルス感染症の流行拡大により、厚生労働省は初診からオンライン診療を実施することを解禁しています。これに伴い、高ストレス者と判断されたものや、長時間労働者に対して行われる産業医の面談を、オンライン化する動きが進んでいます。

企業内にキャリアカウンセラーやメンタルカウンセラーを設置している場合は、これらの面談もオンラインでできるようにすることで、従業員の健康管理への効果が高まるでしょう。

まとめ

コロナ禍の不安が続き、さまざまな行動が制限される状況下では、在宅勤務によって従業員の体調不良やメンタル不調が引き起こされる事態にもなりかねません。そのため、企業には従業員の健康管理に以前よりも一層気を配る必要があります。

在宅勤務をする従業員の健康管理を行うためには、オンラインを利用したさまざまな新しい取り組みと、管理職の意識付けが必要です。従業員が心身ともに健康で働ける環境を整えることは、業績にも直結する重要事項として、会社全体の認識を深めましょう。

※この記事は、「コロナ禍で企業の健康管理はどう変わる? オンラインでの健康管理とは」の転載です。

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