「バックオフィスDX」実践の秘訣は“小さな成功体験”を積み上げること

バックオフィス業務の効率化を、多彩なSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)ソリューション群で実現するマネーフォワード。市場から多くの支持を集める同社は、バックオフィス改革の道筋を見出しています。コロナ禍でバックオフィスDXが避けられない情勢の中、今企業は何から手を付けるべきなのか聞きました。

業務の効率化を、より良い会社づくりの時間に

株式会社マネーフォワード
マネーフォワードビジネスカンパニー
カンパニー執行役員
HRソリューション本部
本部長
福原岳史氏

「いい会社は、バックオフィスが強い」と語るのは、「マネーフォワード クラウド給与」をはじめ、バックオフィス業務の効率化を一手に担うSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)を提供するマネーフォワードの福原岳史さんです。

「バックオフィス業務を効率化できたからといって、人員削減につなげるべきではありません。効率化によって空いた時間ができたら、従業員が働きやすい環境をどのように構築するのか、より良い企業をつくり上げるための時間に充てていただきたいんです」と福原氏は強調します。

ただ、実際のバックオフィス部門は業務の重要度が高く、作業量も圧倒的に多いのが一般的です。センシティブな情報を取り扱うためミスも許されません。結果、業務が属人化して、簡単に引継ぎできなかったり、シンプルな運用フローの構築が難しい場面が多発しがちです。

さらにコロナ禍を経て、多くの企業でテレワークを進めているものの、人事や労務などのバックオフィス部門はデジタル化が進まず、職場への出社を余儀なくされている例も少なくないでしょう。紙での運用が多く残る実態からも、機密情報を持ち出すことができず、外部からのアクセスに制限があることなどが、その理由として挙げらます。

「マネジメント層や担当者の皆さんと話していても、ペーパーレス化やDX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性は、既に理解されています。それでも、どこから手をつけてよいのか分からない企業や担当者が、まだまだ多いのではないでしょうか」と、福原さんは国内企業のバックオフィス部門が直面する課題に言及します。

担当者がデジタル化に取り組める業務がカギ

では、「どこから手をつけてよいのか分からない」という企業の悩みに対して、マネーフォワードではどのようなアドバイスやサポートを行っているのでしょうか。同社では現在、中小企業からエンタープライズまで、企業規模や業種を問わず多くの顧客を抱えています。そうした多種多様な顧客のファーストステップとして、よく提案するのが「目先業務のペーパーレス化」だといいます。

「バックオフィス業務のデジタル化でも、社員全員が新しいクラウドシステムを使う必要がある場合だと、社内全体に影響が及ぶため、各方面への調整が欠かせません。しかし、例えば給与計算であれば、担当者ベースで話が進められるため、影響する範囲が小さく、スモールスタートが可能です」(福原さん)。

いきなり全社レベル、バックオフィス全体のDXを推し進めるのは、様々な場面でハードルが高くなりがちです。まずはペーパーレス化に取り組みやすい、目先の業務からデジタル化を始めて、小さくても成功体験を積み重ねることをお勧めします。そうすることで、次のステップにつなげやすくなるはずです。

もちろん一大プロジェクトを組んで、バックオフィス部門全体のDXを進めようとする企業もあるでしょう。大きなプロジェクトとして変革を進める場合、これまでの運用を変えることに、社内からの反発が強く、デジタル化がうまく進展しないことも少なくありません。

こうした点については、これまで数多くのクラウド導入を主導してきた福原氏は、「あるお客様では、“影響力の強い”社員の方にまずは利用してもらい、デジタル化の利便性を実感してもらってから、社内に浸透させた例も 」と明かします。

小さな成功体験を1年以内に次につなげる

デジタル化を業務単位で始めるにせよ、企業全体のプロジェクトにするにせよ、「バックオフィス部門の変革は、『働き方改革』や『DX』という言葉やイメージにとらわれすぎてはいけません」と福原さんは話します。

デジタルツールの導入が目的化してしまい、導入コストが適正なのかといった判断も曖昧になりがちで、従業員が働きやすい環境をつくるという本来の目的に到達できなくなるからです。

「スキルの高い従業員の退職や異動が決まってから慌てるのではなく、業務が特定の人に属人化しないよう気を付けてください。日ごろから、バックオフィスの業務をできる限り標準化し、可視化する体制を構築しておくことが大切です。ツール導入の可否はその次ですね」と福原さんは訴えます。そうしたシンプルな運用を目指す上で、結果の出しやすい場所からツールを採用することが、改革の近道だといいます。

「バックオフィス部門のデジタル活用、“バックオフィスDX”を成功させる企業の特長を見ると、担当者だけで進められる給与計算のデジタル化から始め、1年以内に次の小さな業務のデジタル化を1つ、2つと重ねられる企業は、波に乗ってバックオフィス全体のDXを実現しています。小さな成功体験を、地道に積み上げられるかどうかが、DXを成功させるか、失敗に終わらせるかの分かれ目だと思います」(福原さん)。

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