ニューノーマル時代の新卒採用の新常識~採用活動をイノベートせよ!今、リアルを見せる会社が強い

人材採用コンサルティングや学生向けキャリア支援事業を行う株式会社Legaseed(レガシード)は、創業から7年の若い企業でありながら、新卒採用に1万以上が殺到する “日本一学生が集まる中小企業”として注目を集めています。なぜ、それほど多くの人材を集められるのか。代表取締役の近藤悦康氏に、新卒採用の現状や課題、一歩先をゆく採用戦略についてお聞きしました 。

somu-lier[ソムリエ] | 総務がつなげるハッピー・スピリッツ に掲載された記事を転載しております。

近年の新卒採用事情と課題

新卒採用は空前の売り手市場が続いています。2020年3月卒業の大学生や大学院生対象の求人倍率は1.83倍、300人未満の中小企業に限れば8.62倍の高水準で(*1)、一人の学生に9社程度の内定が出る計算です。また、2020年の大手新卒採用情報サイトのリクナビ、マイナビの掲載社数は約3万社。2013年の約6千社から7年で5倍近くに増えています。

このような売り手市場にともない顕在化するのが、人が集まらない、内定辞退が増える、という問題です。就職サイトから自社を探し出してもらえる可能性は限りなく低く、無事に人が集まったとしても内定を出した後にフラれるケースが続出。大手就職情報サイトの調査によれば、2019年の内定辞退率は66%。求人倍率が示すように中小企業の採用意欲は高いのですが、思うように人材を獲得できないのがここ数年の実情です。

*1 リクルートワークス研究所 大卒求人倍率調査(2020年卒)

「採用の成功」とは何を指すのか?

採用が成功しない根本原因は、ズバリ採用活動にあります。現在、多くの企業で行われている選考は、説明会に始まり、筆記試験や面接を3ヶ月程度かけて行う方法で、一人当たりの接触時間は5、6時間。就職は人生における重要な意思決定であるはずなのに、短時間で、しかも企業から一方的に与えられた情報だけで決断しなければならない。これは相当難易度が高いですそのため「入社3年以内の離職率が30%」(*2)も、納得感がある数字といえるでしょう。仕事は1日の大半を占める活動であり、定年まで働くことを想定すれば企業と結婚するようなもの。人生をともにする結婚相手とも言える企業を5、6時間という短時間で果たして決められるでしょうか? ミスマッチングを防ぐためにも企業と学生がお互いのことを知る時間をいかに作るのかがポイントになってくるわけです。

ところで、そもそも「採用の成功」とは何でしょうか?目標人数を確保すれば成功でしょうか? 決してそうではありません。採用活動が成功するということには「定着化」×「戦力化」が必要と私は定義します。定着しているのに活躍しないのならその社員はお荷物であるし、また戦力なのに辞められてしまうのなら、企業と新入社員との間でのミスマッチが起きているわけです。したがって、採用プロジェクトに携わるスタッフは、採用した人材が一人前となって会社の未来を担う人材となり、本人もこの会社で長く働きたいと思えるようになる採用活動を目指さなくてはなりません。

*2 厚生労働省調べ

会社のリアルを見せるインターンシップ

そこで、ポイントとなるのがインターンシップです。売り手市場の今、エントリー数や説明会などへの参加者数は軒並み減少傾向。そんな中でインターンシップ参加者数は年々増加しており、2019年度のマイナビ大学生インターンシップ調査では、学生の約80%が3~4社のインターンシップに参加しているという結果が出ています。さらには、インターンシップ参加を経て入社する率は、2018年が22%、2019年が37・4%、おそらく2020年は40%近くなるはずで、3年で約2倍に増えています。

インターンシップが学生に支持される一番の理由は「会社のリアルな姿を体験できる」という点。従来の新卒採用フローでは3月1日以降、学生が会社の中身を知る機会はほぼありません。そのためインターンシップ期間中に先輩になる可能性のある現職の社員と一緒に働いてみたり、実際に業務を遂行することでどういう企業なのかを見極める貴重な機会になるわけです。その中で自分にマッチする会社が見つかれば、早い段階で意思決定をしても良い…そんな風に学生の志向は変化しているのです。

だからこそ企業は、インターンというフレームを活用しながら、学生に会社のことを掴んでもらえる時間や機会を積極的に提供していく採用活動を展開するべきです。今、強いのは、ポジティブ面もネガティブ面も包み隠さず、リアルを見せている会社です。

またインターンシップを実施することは、学生へのメリットだけでなく企業側にもミスマッチを削減できるメリットがあります。たとえば野球選手なら、投球や打撃を見て入団を決めるのが当然でしょう。企業であれば「実際に働かせてみてどうか」が肝心で、それを間近で見て判断できるのがインターンシップというシステムです。そこでうまくマッチングできれば、入社してまもない新卒社員が即戦力として手腕を発揮することも可能なわけです。

行動で判断!Legaseedの新卒選考方法

当社では、創業時よりインターンシップを軸に独自の選考フローを運用しており、筆記試験や面接は行いません。判断基準とするのは行動。グループワークに参加しているときやインターンシップで共に行動しているときの様子を観察し、適性やポテンシャルをきっちりと見極めていきます。

まずは会社見学会(OPEN COMPANY)に参加して会社や業務について理解を深めていただき、希望者は成長が実感できるプログラムが用意された2Daysインターンシップに進みます。2Daysをクリアすると、次はよりハイレベルな3Daysのシミュレーション体感インターンシップへ。そこで高い成果を上げた学生を中心に採用するのが大枠の流れです。一人当たりの採用活動に使う時間は100時間以上に及ぶでしょうか。 大切にしているのは等身大の姿を見せること。一例を挙げると、OPEN COMPANY参加者には、オフィシャルな会社案内と別にもう一冊、内定者たちで作った会社案内を配ります。

そこには、仕事の魅力、やりがいだけでなく、「残業が多い」「仕事とプライベートの境目がない」などネガティブな情報も嘘偽りなく盛り込まれていて、「こんなに厳しい面もあるが、それでも入社したいか?」と、本気の意思を問うツールとして大きな役目を果たしています。実際、それを見てインターンシップへの参加を取りやめる学生もいますから。私たちが一緒に働きたいのは、当社の厳しさ、欠点や未熟なところを知ってもらったうえで、「こういう環境こそ成長できる」「会社を良くするために腕をふるいたい」と考え、不満があってもそれを超えて、地道な努力や挑戦を続けてくれる人です。等身大の姿を見せずにステップを進めていくのはミスマッチの原因になり、お互いのためになりません

◎成功させる新卒採用のポイント

  • インターンシップを活用し、企業の等身大の姿を見せる
  • 学生や就活市場の変化、他社の状況、自社の成長に鑑み、採用活動をイノベートする
  • 人材獲得だけを目的とせず、学生や社会に影響を与える企画を考える

新卒採用にはイノベーションが必要

新卒採用には定期的なイノベーションが必要です。なぜなら、学生が使うツールや就活観、就活市場、他社の状況などは年々変化しており、毎年同じような戦略ではうまくいくはずがないのです。前年よりも質の高い人材を採用できるよう、常に戦略を練り直すことを怠ってはいけません。

さらには、優秀な人材を獲得することだけを目的にして自分たちの効率ばかり優先しないことも重要です。学生の視点に立つことを第一に考え、成長の原動力となったり、モノの見方を広げたり、夢や志を見出だしたり……彼、彼女たちにそんな機会を提供するために、自分たちが役に立てることは何かを考えましょう。

当社では不採用者の連絡を、お決まりの「お祈りメール」で済ませません。採用担当者が電話などを使って不採用の理由、場合によっては向いている業界や職種などのアドバイスも伝えるようにしています。不採用になったからといって一方的に知らせるのではなく、その学生にとって有益な情報を伝える機会を必ず設けるのです。学生にとって「何がためになるか」、また「何が成長につながるのか」そして、「学生や社会に対して影響を与える採用活動とはどんなものなのか」。使命感を持って企画を考えれば、内容はガラリと変わるはず。その志は必ず学生に伝わります。  新卒採用は、会社を魅力的に変えていくためのイノベーション活動でもあります。優秀な人材を採用するためには、自社が選ばれる会社になるよう、経営者以下、従業員が一丸となって会社を磨いていかなければなりません。

その結果、より良い人材が入社することで新しい商品やサービスが生まれ、会社が成長することで社会への関わり方や影響力も変わるでしょう。新規事業を始めるのと同等の覚悟で取り組むべき一大プロジェクトなのです。これは決して大げさではなく、新卒採用活動がより本質的かつ実践的になれば世の中は変わります。会社と社会の未来を創り出すために、大きな志を持って中・長期的な戦略で取り組みましょう。

取材にご協力いただいたご担当者様/企業様

近藤悦康氏

株式会社Legaseed 代表取締役
2013年、株式会社レガシードを設立。年間100社を超える企業のコンサルティングを行うほか、延べ7万人を超える経営者、採用担当者、新卒学生などに対してセミナーやワークショップを実施している。『日本一学生が集まる中小企業の秘密』(徳間書店)、『内定辞退ゼロ』(実業之日本社)など著書多数。

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