※当記事はMoneyForward Bizpediaに掲載された記事を転載しております。
所得控除とは?
個人の所得税を計算する際、その人の所得金額から差し引くことができるものを所得控除といいます。各納税者によって個人的な事情は異なるため、それを考慮するために設けられています。
それぞれの所得控除を受けるための要件を満たすと、所得の合計額から控除の合計額が差し引かれ、その残りの金額に対してして所得税が計算されます。
所得控除の種類とその内容
所得控除は全部で14種類あります。勤務先の年末調整でおなじみのものから、確定申告をしなければ適用できないものまであります。
ここでは、それぞれの所得控除の種類と内容について確認します。
1. 雑損控除
災害や盗難、横領によって資産に損害を受けた場合は、一定額の所得控除を受けることができます。
また、現金の盗難も対象となりますので、万が一そのような事態になった場合には、証拠として警察へ被害届を出しておきましょう。
2. 医療費控除
1月1日から12月31日までの間に本人や配偶者、同居の親族などが支払った医療費(最高200万円まで)について所得控除を受けることができます。
ただし、10万円か一定の所得金額の5%のどちらか低い方の金額以上の医療費があった場合にしか適用されないので注意しましょう。
また、医療費控除の特例として、2017年よりセルフメディケーション税制が始まりました。セルフメディケーション税制は一定の健康診断や予防接種などを行っている場合、ロキソニンテープなどの特定一般用医薬品の合計額(保険金等により補塡(ほてん)される部分の金額を除く)のうち、12,000円を超える部分の金額(88,000円を限度)が控除される制度です。
セルフメディケーション税制は通常の医療費控除と選択になりますが、例えば、医療費の額が80,000円で通常の医療費控除を受けることができない人でも、セルフメディケーション(特例)により68,000円(80,000円-12,000円)の医療費控除を受けることができます。
3. 社会保険料控除
納税する本人、配偶者、同居の親族などが健康保険料、厚生年金保険料、国民健康保険料、国民年金などを支払った場合には、その支払った金額に対して所得控除を受けることができます。
社会保険料は1月1日から12月31日までに支払ったものが対象となりますので、国民健康保険料や国民年金を年末に支払った場合には、年末調整で申告漏れとなることが多いので注意が必要です。
4. 小規模企業共済等掛金控除
納税者が小規模企業共済の掛金や、iDeCo(イデコ)などの個人型年金加入者掛金を支払った場合、その金額に対して所得控除を受けることができます。
iDeCoも年末調整で所得控除できますので、忘れずに勤務先に申告しましょう。
5. 生命保険料控除
納税者が生命保険料、介護医療保険料や個人年金保険料を支払った場合には、保険の種類によって最大12万円の所得控除を受けることができます。
実際に支払っている人が適用を受けられますので、保険に多く加入している人は、支払い者をよく確認した上で生命保険料控除の適用を受けましょう。
6. 地震保険料控除
納税者が地震保険料を支払った場合には、一定額(最高5万円)の所得控除を受けることができます。
火災保険は適用になりませんので注意しましょう。
7. 寄付金控除
納税者が国や地方公共団体(ふるさと納税を含む)、特定公益増進法人、社会福祉法人などに対して寄付をした場合には、寄付金控除を受けることができます。なお、政治活動に関する寄付金、認定NPO法人等に対する寄付金、公益社団法人等に対する寄付金のうち一定のものについては、所得控除の代わりに、税額控除を選択することができます。
確定申告の際に、寄付した団体から交付を受けた寄付金の受領証(領収書)が必要になりますので、紛失などしないよう保管しておいてください。
8. 障害者控除
納税する本人、配偶者または扶養親族が一定の障害者に該当する場合は、一定額の障害者控除を受けることができます。控除額は一般障害者の場合で27万円、特別障害者(身体障害1級または2級の方や精神障害1級の方など)の場合は40万円、同居特別障害者だと75万円です。
9. 寡婦(寡夫)控除
納税者(女性)が一般の寡婦であれば、27万円の所得控除を受けることができます。
一般の寡婦とは、納税者本人が12月31日の時点で次のいずれかの条件に当てはまる場合です。
- 夫と死別、もしくは離婚した後、婚姻をしておらず、扶養親族がいる、または生計を一にする子がいる
- 夫と死別した後、婚姻をしていない人で、合計所得金額が500万円以下の人
さらに、一般の寡婦に該当する人に扶養親族である子がおり、かつ、合計所得金額が500万円以下の場合には、特別の寡婦として35万円の所得控除が受けられます。
また、納税者(男性)が寡夫に該当するときは、27万円の所得控除を受けることができます。
寡夫とは、合計所得金額が500万円以下で妻と死別、もしくは離婚をして生計を一にする子がいる人です。
10. 勤労学生控除
納税者自身が学生で合計所得金額が65万円以下の場合などに該当するときは27万円の所得控除を受けることができます。
11. 扶養控除
納税者に控除対象の扶養親族(扶養親族のうち、12月31日現在の年齢が16歳以上の人)がいる場合には、一定額の所得控除が受けられます。
扶養親族とは、配偶者以外の親族で生計を共にしており、合計所得金額が38万円以下(2020年分以降は48万円以下)である人をいいます。
<控除額>
- 一般扶養親族の場合:38万円
- 特定扶養親族(控除対象の扶養親族のうち、19歳以上23歳未満の人)の場合:63万円
- 老人扶養親族(控除対象の扶養親族のうち、70歳以上の人)の場合:48万円
- 同居老親など(老人扶養親族のうち、納税者またはその配偶者の直系の父母・祖父母などで同居している人)の場合:58万円
12. 配偶者控除
納税者(合計所得金額が1,000万円以下に限ります)に控除対象の配偶者(合計所得金額が48万円以下など一定の人)がいる場合には、納税者の合計所得金額に応じて13万円から38万円の所得控除が受けられます。
また、老人控除対象の配偶者(70歳以上)がいる場合には、16万円から48万円の所得控除が受けられます。
13. 配偶者特別控除
配偶者に48万円を超える所得があるため配偶者控除の適用が受けられないときでも、納税者本人と配偶者の所得金額に応じて、1万円から38万円の所得控除を受けることができます。
14. 基礎控除
基礎控除として、全ての人が38万円(2020年分以降、所得2,400万円以下で控除額48万円)の所得控除をすることができます。
所得控除はどうすれば適用できるの?
サラリーマンであれば、勤務先で年末調整をすることにより、基本的な所得控除を受けることができます。
ただし、雑損控除・医療費控除・寄付金控除については、確定申告をしなければその適用を受けることができません。
もし、年末調整で受けられる所得控除を忘れて勤務先に申告してしまった場合でも、更正の請求をすることによって支払った税金を取り戻すことができます。
また、サラリーマン以外の自営業者の方は、年末調整を行いませんので、確定申告の際に全ての所得控除の適用を受けることになります。
所得控除額の具体的な計算例
会社員で給与所得が500万円、配偶者はパート収入103万円、同居の長男(19歳の大学生)社会保険料50万円の場合
配偶者控除38万円
扶養控除(特定扶養親族)63万円
社会保険料控除 50万円
基礎控除 38万円(2020年分以降、所得2,400万円以下で控除額48万円)
合計 189万円
給与所得500万円-所得控除額189万円=311万円
この311万円に対して所得税率等を乗じて所得税が計算されます。
寡婦控除の申請漏れに注意
申告を忘れやすい事例として、夫と離婚して子供がいる方が寡婦控除(上記9)の適用を受けていないケースがあります。
寡婦控除は27万円の所得控除ですので、税率が10%の方ですと27,000円(270,000円×10%)の減税になります。
申告期限から5年以内であれば更正の請求ができますので、心当たりのある方は更正の請求により、納めすぎた税金の還付申請をしましょう。
また、扶養の配偶者が自分の口座引き落としで国民年金を支払っている場合、配偶者の社会保険料控除になります。これを現金納付に変更して納税者が支払うことで、納税者の社会保険料控除となり節税につながります。この機会に検討してみてはいかがでしょうか。
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