長期化するコロナ禍の中で、日本でもテレワークの導入が一気に加速するなど、バックオフィス部門の役割がより一層重要になっています。これまでバックオフィスの役割は、「縁の下の力持ち」的イメージが強いものでした。しかし、変化の激しい社会情勢の中で、テレワークもその1つですが、バックオフィスの働きぶりが企業経営に直結する時代になっています。
コロナ禍で“働き方改革×DX”が不可避に
現在、企業におけるバックオフィス部門の課題といえば、まず挙げられるのが「テレワーク」ではないでしょうか。これまでいくら論議を重ねてきても、なかなか実践がままならなかったテレワークですが、長期化するコロナ禍の中で、国や自治体からの大号令で進められています。
クラウド型の勤怠管理システムを手掛けるソニービズネットワークスの國分康平さんによれば、自社で行ったアンケートを見ても「2020年以前は、テレワーク導入実績が5割未満だったのに対し、2021年3月時点で8割近い企業が、テレワーク導入または一部で導入を実現している」といいます。
ですが、テレワークの実践はそれほど簡単ではありません。導入以前の企業が共通して抱えるのは、「ネットワークインフラの課題」と國分さんは指摘します。働く場所を問わないテレワークを実施するならば、当然そのインフラはクラウド環境が前提です。ただ、社内でしか活用できなかったオンプレミスのシステムと連携するには、まだ難しさが残ります。
また、いくら自社がテレワーク導入にこぎつけたとしても、取引先もデジタル化が進んでいなければ、完全な対応はできません。「業種・業界によっては、まだまだ判子や紙の書類のやり取りが必須の場合も多いといいます。完全にテレワークに切り替えた企業でも、バックオフィス部門は輪番で出社するケースも少なくないようです」(國分さん)。
テレワーク導入で人材採用の成否が左右される
では、新型コロナウイルスの感染拡大が収束すれば、テレワークは一時的な対策だったとして、失速するのでしょうか。國分さんは「それは考えられません」と明言します。そもそもテレワークを、ソニービズネットワークスでは、生産性の高い、理想的な働き方と非常にポジティブにとらえていました。
「こういった形で普及するとは予見できませんでしたが、テレワークがいずれ働き方のスタンダードになると考えていました。今後は、テレワークのみ、その一辺倒ではなく、それぞれの企業、業務内容に合わせて、ハイブリッド型の働き方が進むのではないでしょうか」と國分さんは予想を語ります。
実際にソニービズネットワークスも、2020年3月から完全テレワークに切り替え、この1年半近く運用する中で、働き方の変革によるメリットやポジティブな要素が確実に増えました。通常通りに業務が行えたことはもちろん、売上も堅調で、生産性も上がったと感じます。
中でも面白いのは、採用活動が好調なこと。すべてオンライン面接に切り替えたことで応募の母数が大幅に増え、優秀な人材を多く採用できているといいます。「ブラック企業という言葉にも象徴されるように、これまで応募者が面接で特に気にしていたのは、残業時間など働く環境に関してが多かったのではないかと思います。今はそれにプラスして、テレワークの実施状況についても関心が高くなっていると聞いています」と國分さんは明かします。
つまり、テレワークを実践するかどうかは、人材採用の成否を左右する施策であり、企業経営や競争力の強化に直結するというわけです。インフラなど環境が整わないからと踏み切れずにいては、時代に取り残されていく危険性すらあります。
「ワーケーション」や「男性育休」など、柔軟な働き方に関するキーワードも少なくありません。これから求められる働き方に対応できずにいれば、人が集まらない企業になるでしょう。テレワーク1つをとっても、バックオフィス部門が采配を振るう業務の重要度は増しており、企業価値や経営に対する影響も変化しています。
海外ではバックオフィスが“社長の右腕”
「日本ではバックオフィス部門というと、“社内の縁の下の力持ち”、悪く言えば何でも屋さん的なイメージが付きまといますが、海外だと全く違います。経営にダイレクトに参画し、社長の右腕のポジションにいることも少なくありません。日本でもここ最近は、そうしたマインドを持ったバックオフィスの方が増えてきたと感じます」と國分さんは言います。
従来通りに業務をこなす守備的なバックオフィスから、自ら業務を創り出すような攻めの姿勢が求められているのです。トップダウンでテレワーク実施が指示されたとしても、自身の頭を使いながら、売上を向上できるような業務変革を起こせるのか――。経営戦略として、先を見据えたバックオフィスのチャレンジが求められているのでしょう。
「ただ、実際には緊急的措置として、とりあえずテレワークを導入しましたという企業も多いでしょう。また、今後どうしたらテレワークを実現できるのかと、今まさに頭を抱えているバックオフィス部門の方も少なくないはずです。いずれにせよ、まず始めてみるというのが一番の早道だと思います」と國分さんは力を込めます。
検討に検討を重ねて、最後まで踏み切れないよりも、手探りでもまずは取り組んでみて、課題を見つけて改善していくわけです。その時に、目の前の業務だけでなく、企業経営の全体像を眺める視点が重要です。
コロナ禍以前、地方では見向きもされなかった「クラウド」ですが、最近では、オンラインセミナーでも地方の方からの申し込みが殺到しています。それほどまでにテレワークが、日本全体の働き方を変えてしまいました。
「と同時に、オンラインやデジタル化が様々な制限を無効にしてくれます。当社が日本全国に商圏を拡大したように、企業にとってのテレワーク導入やデジタル活用は、新たなビジネスチャンスにつながるはずです。こうした先のビジョンを見通して動けるバックオフィスこそ、今求められているのではないでしょうか」(國分さん)。
クラウド型勤怠管理システム「AKASHI」紹介記事>社会保険労務士と創る勤怠管理システムだから法改正にも素早く対応できる
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労務担当者必読!コロナ禍におけるテレワーク運用の課題と解決策
■内容
新型コロナウイルスの感染防止対策として、急速に普及したテレワーク。大手企業をはじめ多くの中小企業でも、場所や時間にとらわれない働き方が浸透しつつあります。しかし一方で、導入・運用に当たっては、コロナ禍という背景も相まって、労務管理に関する数多の課題も表面化してきています。
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